高知 室戸岬
大阪から遠すぎず近すぎないところ。
大きな海が見えるところ。
そんな条件で選んだのが高知でした。
高知駅から、JRと土佐くろしお鉄道「ごめん・なはり線」を乗り継いで、終点の奈半利まで1時間半。
そこからバスに乗り換えて、国道55号線を1時間ほど走り、室戸岬に着きました。
恥ずかしながら、ちょっとした観光地を想像していたのですが、大きな間違いでした。
海に沿って遊歩道が整備されていますが、それ以外に過保護な施設はありません。
ましてこの時は観光シーズンでもなく、しかも南から強い低気圧が近づいていて荒れた天気だったのです。
室戸岬のバス停で降りたのは自分一人。
ぐるりと見渡しても誰もいません。
海がすぐ近くに見えています。
そこが岬の先端「灌頂ヶ浜」でした。
身体を飛ばされそうな強い風。荒れて泡立つ海。重く暗い空。
あと何歩か歩けば海の中に入ってしまう場所で、岩に激しくぶつかる波を見ていると、とても恐ろしくなります。遭難しても誰も気づいてくれない、早く帰らなければと思いました。
でも、せっかくここまで来たのだから歩いてみようと考え、遊歩道を進みました。
見たこともない植物、原始の姿をした植物が高く深く茂っています。
ますます不安になります。
そのとき、目の前に蟹が現れました。
蟹は立ち止り、こちらを見ています。
蟹は堂々としています。
荒れる海を恐れず、堂々としています。
2時間ほど歩いて灌頂ヶ浜に戻り、帰りのバスに乗りました。
雲が切れて、少し青い空が見えました。